人の打球って、どの角度から見ていますか?

僕は、他の人が打った打球は結構しっかりと見ているタイプです。

それはゴルフのマナーとして当然のことでもありますが、その人がどんなフォームで、どんな球筋のボールを打つのか、クラブに当たった音はどうだったのか、落下地点でボールがどんな止まり方をしているのかなど、人それぞれの技術やホールの攻め方に興味があって観察しているという意味合いも大きいです。
だから上手な人が打つのも、下手な人が打つのも、両方とも勉強になっていますね。
要は、下手くそな僕が早く上達したいがため、研究のためです。

そのせいなのかどうか、僕は「ナイスショット!!」の発声タイミングが、きっと他の人より早いんです。クラブにボールが当たった音、打球の勢いや角度で、そのショットが素晴らしい当たりだと思った瞬間、勝手に声が出る身体になってしまっているので。

そして、もちろんどの人のショットも真後ろから見ているのではありません。
ティーショットならともかく、2打目、3打目でグリーンを狙って打っているのを見る場合は、ほとんどが離れたところから。飛んでいくボールを真横から眺めていることが普通です。真横から見ていると、ある程度の勢いと高さが出ている打球は、全部グリーンへと向かって一直線に飛んでいるように見えます。
その時に思わず出る
「ナイスショット!!」
それは心からの賞賛の声です。

「ナイスショット!!」のタイミングが早すぎたことによって起こる悲劇

お察しの通り、問題なのは「ナイスショット!!」と声をかけたその打球がグリーンから左右に外れて、バンカーなどに落ちてしまった時。

打った本人からしてみたら、バンカーなどへと打ち込んだことを「ナイスショット」と皮肉られたかのように感じることもあるでしょう。いや、頼むからよく思い出してくれ。バンカーに入るより随分早く聴こえてたはずだから。僕の「ナイスショット!!」は。

「ああ・・・バンカーでしたか・・・素晴らしい打球でしたけどね・・・」
僕もナイスショットの言いっ放しだとバツが悪いので、あとからちゃんとフォローはしています。
ところが、バンカーならまだともかく、飛び込んだのがペナルティの池だったりOBだったら・・・

つまり、「ナイスショット!!」のタイミングにはもう少し慎重にならなくては。
これが僕の課題です。
だけど本当に心からの声なんだよなー。
そんな皮肉、よほどの仲良しでなければ言うはずがないじゃないですか。

ラウンド中に氷漬けにされた話

ある日のラウンドでのことでした。

仕事先のコンペで、一緒にまわるメンバーは全員が初めまして。
その中に1人、いかにも上手そうな年配の人がいました。
スタート前の挨拶の時点から僕らとは少し離れて自分だけの空間を作り、ゴルフに対する相当な熱意とプライドが前面に表れすぎて異様なオーラを放っています。
(ちょっと苦手なタイプかもしれないな・・・) 僕の危険察知シグナルが発動です。
こういう時は、「ナイスショット!!」の発声にはとても慎重になります。いや、普段が適当なのではなく、様子見で言いたいのを一旦我慢するってことなんですが。

最初に感じた通り、その人は相当な腕前で、良いショットを連発していました。
ただ、どのホールもグリーンにパーオンしている訳ではなく、グリーン周りからの素晴らしいアプローチでパーを重ねている状況だったので、ティーショット以外で「ナイスショット!!」を言って良いのかわからず、2打目以降の「ナイスショット!!」は封印状態です。
一度はグリーン横のバンカーに入れていたので、胸を撫でおろした時もありました。いやあ、良かった。「ナイスショット!!」よ、慎重であれ。

何番目かのホールです。打ち下ろしのグリーンへその人の第2打。
方向性バッチリのショットは直接グリーンを捉え、トロトロゆっくりと転がってグリーン上に残りました。
僕でもほぼ2パットで決められそうな位置です。
さあ! 今こそ!! 待ってました!!!
「ナイスオン!!」
その時です。

「こんなのはナイスオンじゃねえんだ。」
?????

それまで「どうも。」「ナイス。」スコアの申告以外、ほとんど無口だった彼が初めて交わそうとした会話がこの言葉。おまえ、喧嘩しに来てるのかい?
え?結構難しいミドルホール、第2打での直接グリーンオンですよ?
「えぇ?!そうですか???」
僕が呆気に取られていると、次に打った人が見事にグリーンオンしました。スピンもキュッと効いて、ピンまでの距離は喧嘩オヤジの球のさらに半分

「見ろ。ああいうのをナイスオンって言うんだ。」
「あ・・・そうなんですね。それは失礼しました・・・。」

正直、だいぶ腹は立ちましたが、なるほどなぁ、と思いました。
ナイスショットやナイスオンの定義は人それぞれ。理想としている打球も、求めている結果も違います。
打った自分にしかわからない感触もあります。
見ている側からのナイスショットも、ナイスオンも、本人からしたらどうなのか。
それは本人のみぞ知る、です。
バーディーパットを外して、危なげなくパーをとった人に「ナイスパー!」と声をかけたら
「こんなのナイスじゃない」と怒られたなんて話も。
讃える言葉にも改めて慎重にならなくてはいけないな、と考えさせられた日でした。
ま、それでも僕ならあんな言い返し方はせず、ニッコリ「ありがとう」って言いますけどね。
そしてそれでもやっぱり言いたい。良いショットだと思ったら「ナイスショット!!」遠くからグリーンオンしたら「ナイスオン!!」と。

あの日以来、ナイスの発声は今までよりさらに慎重に考えるようにはなりました。
それでも、見ていて(おっ!!)と思った時には思わず出てしまっていますけどね。
見てもいないのに、適当にナイスとさえ言っときゃ良いと思っている人たちよりは全然マシでしょう。
何より、心がこもっています。こっちには。

その人、その後のホールからは、なぜか僕に執拗に話しかけてくるようになりました。
打った球の解説と、自分がどうやって上手くなったかの歴史を。
おかげでそこから最後まで和やかで、最終ホールの上がりの時には自分の教わっているレッスンプロを紹介するぞ、今から一緒に行かないか?というありがた迷惑な打ち解け状態。ああ、あんたそれを話すきっかけが欲しかったのか。

やっぱり苦手なタイプだなあ。