「弱い犬ほどよく吠える」なんてことを言いますが

『バチーン!!!!
もの凄い音が響き渡っています。

ガッチリ体型の自信家Aさんのティーショット、ドライバーの音です。
クラブヘッドの真芯を捉えたであろうそのショットは、理想的な弾道でフェアウェイの真ん中を飛んでいき、落ちたところは見えませんでしたがランも出ていそうで、きっと相当な距離を稼いでいるでしょう。
芯食った!!!これは相当飛んでるぞー!!!」
よほどの好感触だったのでしょう。自画自賛
Aさんの通常運転ですが、いつも以上にハイテンション
「昨日の夜YouTubeでさ、手首のローテーションを使って打つことの・・・」
お得意の高揚したドヤり顔で、みんなが理解できない解説を始めました。理解できないと言うより、興味がないと言った方がしっくりくるか・・・もちろん誰も聞いてはいません。

『パシッ!!』
続いて、細身で口数が少ない
Bさんのドライバー。
Bさんは珍しく僕らと同組で、Aさんとは今日が初対面。洗礼の日です。
こちらも綺麗な球筋Aさんの打球と全く同じ方向へ飛んでいきました。
ただ、なんとなく球の勢いはAさんの打球よりも少し劣っていそうです。
僕と、他のもう一人は少しミスショット。

こうなるともう手が付けられない、Aさんの独壇場です。
「Bさんはスイングは綺麗なんだけど身体の回転だけで打っちゃってるから、飛距離を出すためにはもっと手首のコックを使っ・・・」
カートに乗りながら、初対面のBさんに飛ばしの秘訣を指導し始めました。
ちなみに
Aさんのハンディキャップは13Bさんのハンディキャップは8、シングルプレーヤーです。
Bさんはいつもニコニコしていてとても穏やかな人。
その時も静かな笑顔「そうなんですね。勉強になります。」謙虚に話を聞いていました。
(おい・・・誰が誰に指導してるんだよ・・・)呆れながらもいつものことなので、僕らも今さらAさんを制すような無駄なことはしません。
(仕方ない、満足するまで言わせておこう・・・)Bさんには悪いと思いましたが、これはもはや名物です。そのうちスコアが落ちてきたら静かになることでしょう。

断っておきますが、僕らはそんなAさんのことが嫌いなのではありません。自分のことは棚に上げて人のゴルフを指摘しますし、漢気もあるわけではないですし、マナーも決して良くはなく、とにかくうるさい。
それでもとても優しくて大好きな仲間です。

直して欲しいところは山ほどありますが。

「Aの悲劇」・・・まるで喜劇

ボールが見えるところまでカートが進んできました。
なるほど、あんなに吠えるだけあって、AさんのボールはBさんのボールを30ヤードもオーバードライブ。それよりさらに手前の僕らは、2人のお先にセカンドショットです。
僕らが2打目を打ち終わり、続いて
Bさんがセカンドを打とうとアドレスをした時でした。
「あっ!」
Bさんは小さく声を上げて苦笑いをし、彼が打ち終えるのを前方で待っているAさんのところに向かって歩き出しました。
「すみません、そっちが僕のボールみたいです・・・。」
それを聞いた僕らは、腹を抱えて大笑い。
「嘘!?」
Aさんは顔を真っ赤にしながら、大慌てで本当の自分のボールを打ちに戻って行きました。
まるでマンガのようなオチ。

その後、僕らがどれだけAさんを揶揄い(からかい)続けたのかは想像がつくでしょう?
みんなが仲良しでなければ、相当微妙な空気になるところでした。

どんなに良いショットだろうと、ボールが止まった場所へ行ってみないと状況はわかりません。

弾んだライによっても転がりが変わりますし、とんでもなく距離が出たにしても、運悪くディボット跡に入っていたりすれば、飛ばなかった人より条件が悪い可能性もあります。
そして結局、ゴルフは「上がってナンボ」
行ってみないとわからない、上がってみないとわからない。
恥ずかしかったAさんのように、早合点勝利を勝手に確信して、大口を叩くのはやめましょう。

ま、治らないとは思いますけどね。