朝イチの「初めましてのご挨拶」で必ず出てくる”いやらしさ”の応酬

いつも決まった友だち同士でラウンドしているつもりでも、誰かがみんなの知らなかった別のグループでの友人を連れてきたりして、コースが初めましての場となって仲間の輪がどんどん広がっていくのがゴルフの素晴らしいところ。お1人予約での申し込みや、ゴルフ場の会員になれば尚更、初めましての人とのラウンドの機会が多くなります。

朝一番のスタートホールでは、よほどの無法者の集まりでない限り、お互いに初めましての挨拶が交わされます。

「初めまして〇〇です。今日は一日よろしくお願いします。」
「〇〇です。ご迷惑をおかけしますがすみません。
「こちらこそ、ご迷惑をおかけしないように頑張ります。」

これがほぼ定番のやり取り。
迷惑かけると思っていてもいなくても、適当にこれさえ言っときゃ間違いないみたいなところがあります。ただ、ここで浮上するのが【どの程度の腕前だったら『ご迷惑をおかけします』と言ってもいやらしくないか問題】です。

「ご迷惑をおかけします」こそが諸悪の根源

前に一度、学生時代の同級生とのラウンドに、同じゴルフ場の仲間を招待したことがありました。
お互いに気が合うだろうと思って誘ったのはもちろんですが、100前後のスコアで勝った負けたと得意気になって喜んでいる同級生たちに、70台でラウンドする上級者のゴルフを見せて、ゴルフに対する意識を変えてやろうと思ったのがきっかけです。

「〇〇といいます。今日はご迷惑をおかけしないように頑張ります。よろしくお願いします。」

ゴルフは相当な腕前なものの、少し人見知りで控えめな性格のゴルフ場仲間は、僕の同級生たちに謙虚で丁寧に定番の挨拶をしました。

下手でも全然気にしないでいいから!こちらこそよろしくです!」
僕は、少しだけ残酷な意図もあって、同級生たちにはゴルフ場仲間の腕前を伝えていませんでした。
そんなところからのラウンドスタート。ゴルフ場仲間、上級者のティーショットです。
もちろん素晴らしい打球がフェアウェイのど真ん中に。

「ナイスショット!!ご迷惑だなんて謙遜しちゃって。調子いいじゃん!

同級生たちは少し驚きながらも、何も知らずに自分たちと天地の差がある腕前の上級者に優しく声をかけました。
セカンドショット、アプローチ、パッティング・・・次々に同級生たちが想像していなかったレベルの技量を披露していく上級者。同級生たちが彼にかける言葉も、最初の上から目線よりどんどんトーンダウンです。

3ホールほど終わったところで、少し引きつった表情の同級生が僕にコッソリと聞いてきました。

「あの・・・〇〇さんは普段どのくらいでラウンドしてるの?」
「彼、上手いでしょ。大抵80は切ってるよ。」

やっぱりそうか・・・バツの悪そうな苦笑いで同級生は叫びました。

「なんだよ!それ最初に言っておいてくれよ!俺たち、同じくらいの腕前かと思って彼にすごいこと言っちゃってたじゃないか!」

僕は大笑いしながらその日の意図を明かして、そこからはみんなで和気藹々と、上級者に勉強させてもらいながら楽しくラウンドしました。
これは、気心知れた仲間内だからこそのハッピーな展開

本当に謙虚さのつもりで言っていますか?実は面白がってはいませんか?

ところが、実際の現場ではもっともっとひねくれた闇埋めるのが難しい溝が生まれています。

「ご迷惑をおかけします」の弊害は、お互いの関係性に距離があればあるほど出てきます。

自分より下手だと思い込んでいた相手が、実は自分など足元にも及ばない実力を見せてきた時、その気まずさと恐怖感はなかなかインパクトがあるものです。

それどころか、「下手でも自分は気にならないから心配いらない」とか、「僕も下手くそだから大丈夫」なんてニュアンスのことを不用意に言ってしまっていた時には、(このあとどうやってフォローしたら恥ずかしくないだろうか?)と悩んでしまいますね。
心境的にゴルフどころではなくなる場合だってあります。とはいえ、勝手に自分よりも下手と思い込んだ浅はかさが良くないのですが・・・いえ、違います。
諸悪の根源は「ご迷惑をおかけします」なのです。

もちろんあなたも言ったことがあるでしょう?

「ご迷惑をおかけしますが、すみません。」
「迷惑をおかけしないよう頑張ります。」と。

その時、心の中ではなんと思っていましたか?

まだまだ恥ずかしい腕前で、心の底から「迷惑をかけて申し訳ない」と思った時期もあるかも知れません。ただ、そもそも(自分の腕では周りに迷惑をかけるだろう)と本気で思っている人は、1人で知らない現場に飛び込んで行ったりできません。

技量が上がってきて、なんなら腕試しのつもりで一人予約に飛び込んでみたなんて時は、本心は(ちょっと下手くそをイメージさせて、あとでビックリさせてやろうなんて思っていたのと違いますか?そんな邪心がなかったと断言できますか?
そして、「ああ、下手でも走れば迷惑にならないから全然気にしなくっていいよ。」なんて言わせて面白がってはいませんか?

いえ、上級者の「ご迷惑をおかけします」にはそういうイタズラ心、多少は絶対にあると思っています。
もちろん、謙虚な気持ちで本心からそう言っている人もいることでしょう。真っ直ぐすぎるその人は、きっと他の場所でも自分では気づかないうちに誰かを傷つけています。

2025年、独断と偏見による新ルールを制定いたします!!

ここで今こそ、上級者も初心者も
「ご迷惑をおかけします宣言の禁止」を提言します。

まずは上級者

あいつ、俺より断然上手いくせにバカにしやがって
(みんなを油断させて、嫌味な奴だ

そんなことを思われないように、そしてそんな隙を与えた故、相手に上から目線の不用意な発言をさせてしまうきっかけを作らないように「ご迷惑をおかけします」の発動はやめましょう。
上級者にあるべき、本来の「ご迷惑をおかけしてすみません」の意味合いは
「私、初めましてで皆さんに色々と気を遣わせてしまうかもしれないです。その点ご迷惑をおかけしてすみません。だと思っています。
そこまで細かく解説する覚悟と、それに相応しい技量があるのであれば、どうぞお好きに「ご迷惑をおかけします宣言」をしてください。そして初心者
心境的には、「僕、初心者なのでいろんなところへボールが飛んじゃいます。だから皆さんをお待たせしてご迷惑をおかけします。すみません。なのでしょう。ですがそもそも、ご迷惑をおかけする前提で、先に謝っておいて許してもらおうというのは卑怯です。「おしり触るけどごめんね。」で、逮捕を免れることはできますか?できません。当たり前のことです。

「初心者ですがご迷惑をおかけしないように、頑張って走りますのでよろしくお願いします。」ならば正解でしょうか?
いいえ。それはあなた以外の同伴者が全員、あなたよりも迷惑をかけない人たちであることが前提のセリフです。チョロばかり打つおばちゃん初心者ご老人がいたとして、あなたと一緒にその人にまでひたすら走らせるつもりですか?それは非道というものでしょう。

愛されゴルファーを目指すあなたは、自分の技量を見極め、ちょうどいい塩梅で最初の挨拶をクリアしなくてはいけません。

「〇〇です。今日は楽しくご一緒させていただきます。」

これで良いのです。