プレーファスト、それは潔い証。思いやりの精神。だってそうでしょ?
「ゴルフで最大のマナー違反はスロープレー」
つまり、進行が遅れることです。
ルーティーンが長い人、パットの読みに時間がかかる人、歩くのが遅い人、スローにも色々ありますが、これが迷惑なのではありません。
自分がどの行為をする時に人よりも時間がかかっているのか、自分はどの行為に時間をかけたいと思っているのかをわかっていれば、その他の行動を急げば良いからです。
だから、スタンスを取ってから打つまでに少し時間がかかっても、パッティングのラインを慎重に読んでいても、僕は全然良いと思っています。いや、多少はストレスになる時もあるかな。でも、いいんです。
許せないのは、OBの可能性があるボールや、ロストボールをいつまでも諦めないで探し続けている人、そして、他の行為も遅いのに、気にすれば短縮できるところですら、短縮しようと努力していない人。つまりこれは、プレーファストを意識せず、自分だけのことしか考えていない人ということです。
「前の組、プレーが遅いな。」
誰か一人だけのせいで進行が遅れていても、マナー違反だと評価されるのはその組全体。本当に迷惑な話ですよね。同じ組にそんな迷惑な人がいたら、何とか他のメンバーでフォローしたり注意をしたりして、スピードアップさせなくてはいけません。プレーファスト。これは、潔さと他者への思いやりの精神だと思っています。
ゴルフ場のメンバーになってから、ものすごく疑問に感じていたこと
僕が会員権を買って、晴れてゴルフ場のメンバーになった時に、とても疑問に感じたことがありました。
毎週土日、朝の一番早いスタート時間は、ほとんど同じ人たちによって独占されていたのです。そして、それが暗黙の了解となっているようで、他のメンバーの人たちも文句を一切言わず、スタート時間の管理をしているフロントスタッフの皆さんもそれを黙認していました。
できればゴルフの後の時間を有効に使いたかった僕は、早い時間のスタートでラウンドしたい日も当然あったので、トップスタートの独占にはとても憤慨していました。
これはいつか問題提起をしなくては。まずは、もっとここのメンバーシップに慣れて、タイミングを見て言おう。そう思っていたのです。
ある時、たまたまトップスタートの時間に一人だけ欠員が出ていて、そこに僕が入れることになりました。
午後から予定があったので少し急いでいることを伝えたところ、フロントのスタッフさんが欠員が出たトップの枠にねじ込んでくれたのです。
(これは良い機会だ。どうしていつもこの人たちが独占しているのかを聞いてやろう。)意気込んでのラウンドスタートです。
まず一番最初に驚いたこと。
それはこのトップスタートの人たちが、全員70代後半から80代の超ご年配だったことです。
(なるほど、こんなに年寄り連中だったか・・・このゴルフ場の重鎮だからみんな気を遣ってるんだな?)
そう思いながら観察していたロングホール1番のティーショット。
トップバッターの爺さんのドライバーショットは、ゆっくり、ゆったりとしたスイングで、クラブの芯を捉えた素晴らしいショット。ただ、年齢のせいで飛距離は全く出ていません。それでも上手い。
(ああ、ゴルフが上手すぎるからか。それでみんな気を遣っているところでもあるんだな?)ところが続く二人はそうでもありません。
上手くもないし、飛距離も出ていない。(あれ?全然そうでもない・・・)
4番目のティーショットだった僕は、もちろん4人の中で一番の飛距離で悠々とカートに戻りました。「若いのはいいなあ!」重鎮たちがみんなで褒めてくれます。
(なんだろう・・・偉い人たちなのに優しいから、みんなが彼らに希望の時間でラウンドさせてあげてるのかな?)
人間的に素晴らしい人たちなら、それはそれで仕方ないかもと、最初の威勢を尻すぼみにしながらの僕の第2打です。
その時、気づいたことがありました。
(あれ?早い!!)
カートを降りて、僕が自分のボールの位置に到着する頃には、他の人たちは次のショットをとっくに打ち終えていました。3打目も、アプローチもです。とにかく早い。誰かが打って、ボールがどの辺に止まるか想像がついた頃には、もう次の人が打っているイメージです。
それでもパターはしっかりと時間をかけているのですが、1パット目をOKの位置につけているのでこれも早い。
僕は少し焦ってきました。
その中の一人、80代の爺さんは脚が悪いらしく、それでも超絶なスピードでラウンドを進行しています。とにかく行動に無駄がない。
9ホールを終えて、ハーフの休憩をするまでにかかった時間はなんと
驚きの1時間15分。
(なるほど!そういうことか!)
僕はそこでやっと理解できました。
みんな爺さんたちに忖度していたのではない、彼らに任せていたのです。
このゴルフ場のペースメーカーを。
トップの時間でスタートするという責任
一番最初にスタートする組の速度以上に、後続の組が速いスピードでラウンドできることは絶対にありません。前の組を追い越してプレーするなんてことがないからです。そして、前の組が速ければ、後ろの組はその背中について行こうと急ぐので、全体のペースが良くなります。
恐ろしいのは逆の場合。トップスタートの組がスロープレーでハーフ2時間30分もかかっていたりすると、その後ろの組もどんどん遅れていきます。前の組より速くなることは絶対になくても、遅くなることはいくらでもあるのです。いや、後ろの組になればなるほど、必ず遅くなってはいくので。
毎週毎週、同じメンバーが朝イチのトップバッターを独占していたのは、彼らが威張っていたからでも優しくしてもらっていたからでもなく、プレーファストの精神を体現できるのが彼らだから。自分の考えの浅はかさを反省した僕でしたが、それからは、70代80代になってもこんな元気に恐るべきスピードでラウンドしてくるこの爺さんたちを尊敬しています。
お先にパットは「普段の2倍の時間」をかけて
この時のラウンドでもう一つ、爺さんたちに教えてもらった大切なことがありました。
あるホールのグリーン上。
僕はファーストパットを残り50センチに付けました。
ところが、「お先に」のセカンドパットを外してしまったのです。
爺さんたちが上手くて早かったこともあって、「お先にいきます。」と、少し慌てて2パット目を打った結果でした。カップを外したその時、一人が教えてくれました。
「〇〇君、お先にパットは、普段の2倍の時間をかけなきゃならん。」
「そうだそうだ。」 「いつもより慎重な気持ちでな。」
爺さんたちは、それだけのスピードでラウンドを進行させながらも、時間をかけるところはしっかりとかけていたのです。パターも、ショットの素振りも。
「わかりました。どうもありがとうございます!」深々と心の底から頭を下げた僕。
彼らのこの姿こそ、僕がいつか目指すゴルファーだなあと感じた、とても良いラウンドでした。
70歳でも、80歳でも、格好良い人たちはちゃんといますね。