ゴルフのスクールに通わなくってもシングルプレーヤーにはなれますか?

最初は(ゴルフは程々のスコアならいいな・・・そう、95前後でコンスタントにラウンドできれば充分なのでは・・・)とか思っていた僕ですが、上手い人たちのゴルフを見ているうちに、いつの間にか「僕もシングルってやつになってみたいな」と考えるようになってきました。

初めてのラウンドから十数年、ずっと仕事のお客さんお下がりのゴルフクラブを使って、100を切ったり切らなかったりのゴルフだったのを、まずは自分でクラブを買わなくてはと。どうせ買うならちゃんとフィッティングしてから買わなくてはと。重ねて、どうせ買うなら難しいクラブにして、そいつを打ちこなせるようになってやろうと。
今になってようやく、難しいクラブを使うことなんてちっとも格好良いことではないと気づくわけですが。

自分が欲しかったそのアイアンセットは、メーカー直営店でフィッテングしてからじゃないと作ってもらえない、ちょっと特別感のある製品。
直営店にはゴルフスクールも付いていて、フィッターはスクールの指導者も兼ね、クラブを販売する流れでスクールにも入会させてやろうしきりに勧誘してきます。


「ゴルフでの目標はありますか?」
シングルになりたいです。」
シングルですか・・・だとすると今のままでは相当努力しないと難しいですよ。」
「そんなことわかってますよ。みんな努力したからシングルになってるんですもんね。」
「まあ、たしかにその通りです。ちなみに今のレベルだと、ご注文されようとしているクラブはラウンドで全く使えないと思いますが。」
「難しいクラブで練習して、ラウンドでは今までのクラブを使えば良くないですか?」
「アリかもしれませんけど・・・難しいとは思いますよ。止めませんけどね。」


今考えるとめちゃくちゃ失礼な野郎だったと思うのですが、数日後、出来てきたクラブを受け取りに行き、スクールに入るか入らないのかの最終確認で「やめておきます。」と返事した時に呆れ顔で言われた捨て台詞「まあ、頑張ってみてくださいよ。」・・・一生忘れません
あそこでしか買えないクラブじゃなかったら絶対にアイツからは買わなかったのに!!!

だから早くシングルになりたいんです。
スクールには通わずに。アイツめ・・・
今に見ていろ。

自分ルールで人のゴルフに口出しすることは禁じています。ところが!

そういう事情もあって一刻も早く上手くなりたい僕は、ホームコースでラウンドした後も時間があればコースの練習場でしばらく打ってから帰るのですが、そこでいつも夕方まで練習している人たちはおおよその顔ぶれが決まっています。
そのほとんどがインタークラブ選手権の代表選手(ゴルフ場を代表して対抗試合に出る人たち)。
片手シングルやプラスハンディの実力者ばかりで、彼らの中に混じって練習しているのは恐れ多いし恥ずかしくもあり・・・。ただ、彼らから見たら不憫に思うほど僕のスイングが酷いらしく、声をかけてくれたり教えてもらえたりもするので、恥ずかしさを我慢してもその場所にいる価値は充分にあります。

その中に、僕と同じく選手でもないのに、いつも練習場が閉まるまでひたすらボールを打っている人がいました。

10歳ほど歳上のその人は、毎週のようにお見かけするのでお互い顔も名前も知っていて、もちろん挨拶や雑談は交わすのですが、ラウンドでご一緒したことはありませんでした。
彼が練習場で打っている球筋とフォームがとても綺麗で、最初は他の皆さん同様に代表選手を狙って頑張っているのだろうと思っていたのですが・・・掲示板に貼り出されるクラブ競技会の順位表では、彼の名前はいつも下位の方に。見れば僕よりスコアが悪く、100以上叩いている時も珍しくありません。
彼のハンディキャップは7。片手にも届きそうな程の、堂々のシングルプレーヤーです。
スコアが悪いのはスイング改造でもしてるからなのかな・・・?だけどいつも練習場で見る球は、音も球筋も素晴らしいし・・・不思議だ・・・。

ある日、彼と打席が隣同士になったタイミングがあったので恐る恐る聞いてみたんです。
「あなたの競技の結果をいつも見ているんですけど、こんなに良い球を打っているのにあのスコアになってしまうのはどうしてなんですか?」
彼は苦笑いをしながら答えました。
「なんでですかね・・・本番だといろんな球が出ちゃうんですよね。」

(そっか・・・これほど良い球が打てていてもラウンドだとおかしくなっちゃうんだ・・・やっぱゴルフってメンタルのスポーツなんだな。彼の気持ちは痛いほどわかる。)

それからしばらく経ったある日、競技会でたまたま彼と同組になって一緒にラウンドする機会がやってきました。
練習場であんなに上手い人があそこまでスコアが崩れる理由は何なんだろう?観察していようっと。

その理由はスタートホールからわかりました。

練習場で打っている時のスイングと、コースでのスイングが全然違っているのです。
リズムが早く、スイングが極端に小さくなっています。スイングのことなんか一切わからない僕でさえも気が付くくらい。
そんな彼から打つたびに滲み出ていたのは、悔しさよりも寂しさでした。
それは見ているこちらが切なくなってくるほどで。
ただ彼が素晴らしかったのは、自身のゴルフはそんな風でも、決してイライラしているようには見せず、同伴者にニコニコしながら優しく声をかけて、褒めたり励ましたり応援したりしていたこと。
そんな人と一緒にラウンドしているのはとても心地良かったです。

ラウンドが終わってみると、やはり彼のスコアは酷いもので、とてもシングルプレーヤーとは思えない結果でした。

「あの・・・僕が言うのは本当に失礼だとは思うのですが」

僕は普段、人のゴルフについて口を出すことは一切ありません。そもそも正しいスイングなんてわからないですし。ただ、なぜかこの時だけ、この人にだけはどうしても言ってあげなくちゃって思って。
しかも相手は、ゴルフの腕前も年齢も僕より相当上の人。怒ってしまうかもしれません。
それでも言ってあげたくなったのは、彼がとても大らかで優しく、そのうえ努力している人だったからなのだと思います。
そしてあまりにも寂しそうだったので。

「練習場でのいつものスイングより、相当早く小さくなっていました。普段の球が打てない理由はきっとそれです。」

「えっ?本当ですか?やっぱり違うんだ!気をつけてみます。どうもありがとうございます。」

シングルの彼とハンディキャップ2桁の僕。まるで立場が反対のやり取りだというのに、彼は怒るどころか感謝を述べて深々と頭を下げました。あ・・・歳も僕よりだいぶ上だ。
なるほど、こういう人は好かれるよなぁ・・・

「あの・・・今日も練習やっていきます?」
彼は少し遠慮気味に僕にそう声をかけると、お昼ご飯も食べずに先に練習場へと向かっていきました。

(素直で素敵な人だなあ。僕より断然上手くて歳上なのに、こんな僕からの言葉に丁寧にお礼も言って。腐らずに練習にも声かけてくれて。)

僕も彼のように懐が深い人間でありたいなぁと、しみじみ感じたラウンドでした。

ゴルフの神様、どうか優しくて努力してる人にちゃんと結果がついてきますように。願わくば僕にも・・・。

実はその日、結局2ラウンドしました。
そんなことができるのもゴルフ場のメンバーになった良いところ。練習をしていたら、別の仲間たちから追加ラウンドのお誘いがあったのです。
彼も誘ってみると「是非お願いできますか?」とのこと

「それじゃ次のラウンドはスコアをつけず、【お互いOBをどれだけ出そうが気にしないで、大きくゆったりスイングする】でいきましょう!」
・・・今考えてみると、僕如きがシングルプレーヤーに何を言っていたのだろうと怖くなります。

しかし!結果、彼は最初のラウンドとは別人のように良いゴルフでラウンドしてきました。ほら!やっぱりそうだったでしょう!

「今日はとても勉強になりました。ありがとうございました。」
ハンディキャップ通りの素晴らしいゴルフを見せてくれた後も、謙虚に深々と頭を下げてお別れをした彼のこと、僕は改めて好きになりました。
このまま、自信を取り戻してくれるといいなあ。

ちなみに、彼と同じように頑張ったはずの僕の2ラウンド目でしたが、結果はいつもと変わらず。
やっぱり基本がなっていないようです。

レッスン通おうかな・・・

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