「若い頃より今の方が飛んでるよ」って言えるの、カッコいいですよねぇ
奥のネットまで距離がある練習場でボールを打っていると、どんな人がドライバーでどこまで飛ばしているのかというのが良くわかります。
中には60代70代の年齢だというのに、明らかに250ヤード以上飛んでいる人も。
聞けば「自分の体力に合うシャフトに替えていけば、60歳くらいまでは飛距離が伸びるよ」なんだそうですね。
そうか・・・僕にもまだまだ希望があるな、と思いながらも、飛距離よりまずは真っ直ぐ打てるようにと練習に励んでいます。
当然、いくつかの年齢からだったり、ケガや病気などがキッカケになったりして、ゴルフが下り坂になってしまう時が来るのでしょう。
その下り坂が出来る限り急勾配にならないようにと、体力作りや練習を頑張ってグランドシニア(70歳以上)の競技に出場し続けたり、エイジシュートを重ねたりしている皆さんは本当に凄い!
打球音もあの年代特有の、力感ゼロでクラブの真芯でボールを捉えた心地良い響きです。
僕もあの歳であんな風に打てるようになれるんだろうか・・・?
ゴルフは他のスポーツと比べたら、相当な高齢になっても高いパフォーマンスを維持することができますが、それでも(昔はあんなにやれたのに)って考えてる人たちは多いですね。
やっぱり一番聞かされるのは、「若い時はもっと飛んだんだよ」という話。
ただ、他の競技をやってる人からは聞かないんだよなぁ・・・「若い時はもっと速かった」とか「昔はもっと力が強かった」なんて話は。
(そりゃ当然そうでしょうよ・・・)と思われるだけだもの。
ゴルフだって同じ、そんなこと聞かされたってこっちはどうでもいいから。
過去の栄光の話ではなく、できれば「若い頃より今の方が飛んでるよ」って、希望が持てる話を聞かせて欲しいものですね。
ええ。その話だったらたとえ自慢話でも少し聞きたいくらいです。
もっとやれた昔の姿を見せたいグランドシニアの話
よく一緒にラウンドする人で、過去にインタークラブの代表選手だった凄い腕前の爺さんがいます。その人が代表選手を務めた、男子のプロツアーが開催されているゴルフ場のハンディキャップボードには、今でもハンディ2のところに彼の名前が。
その頃どれほどの努力をして、どんな大会に出たのか、どんな人と一緒にラウンドしたのか、どんな成績だったのかというのが会うたびの彼の話のネタでした。
ところが、60代になってからの病気で手術をしてからというもの、今までのようにはクラブが振れなくなってしまい、そのうえ眼まで悪くなって彼のゴルフはガタガタに。ひどく衰えてしまいました。
それでもゴルフが大好きで、僕もよく誘われて一緒にラウンドへ出かけます。
年齢も70歳を超えて、身体も以前のように動かない。それでも「昔取った杵柄」で、過去の片鱗が見られるかとも思うのですが、何より病気というのは恐ろしいものですね。身体のバランスが変わってしまっているのか、チョロばかり打っているような見ていて痛々しいほどのゴルフです。
全盛期は知らないまでも、良かった頃を見たことがある僕としてはとても哀しい彼の姿。
ただ、もっと残念なことがあるのです。
「僕はもっと良い球が打てていたんだ」
「昔はこんな球が出たことはなかった」
「やっぱりこのクラブは合わない!」
彼の口から出て来るのは、過去の栄光とミスショットの言い訳ばかり。
聞いているこちらも「そうですよね・・・」としか言えません。
過去の輝きが真実なだけに、ますます切なく・・・。
キャディーさんも可哀想です。
「病気をやってから全然ゴルフが変わっちゃってねえ。それまではインターの選手で、ここのコースならラウンドするたびにアンダーだったよ。」
今のゴルフを見ていて、なんと返せば良いのでしょう。
話を聞くのも仕事のうちだとはいえ、返事に困っているのがひしひしと伝わってきます。
ラウンドが終わると、ドッと疲れが。
楽しいゴルフのはずなのに、思い返せば彼をどうやって励ましたら良いのか、どうやってフォローしたら良いのかを考えてばかりだった・・・。
カッコ良かった時代を見ているだけに、今のカッコ悪さが堪えます。
カッコ悪いのはゴルフの腕ではありません。
いつまでも過去の栄光にすがっている姿です。
まあね、わかりますよ。
彼が見せたいのは華々しかった頃の自分の姿。本当の自分はあの頃の自分。
今、それを見せたいのに見せられないのが歯痒くて恥ずかしい。
もっとやれたんだ!もっとやれるんだ!
きっと、僕が想像しているよりも相当辛いのだろうと思います。
それでも、打つたびに「こんなはずがない」「本当は違う」って聞かされる周りの気持ちも考えなくては。
あなたはカッコいいゴルファーだったんだから。
過去の栄光よりも、今の自分を受け入れたひたむきな姿が素敵です
高齢でもカッコ良いゴルフを続けている人って、遠い過去の自分にはとらわれずに、今を見つめて最近の自分、昨日の自分、さっきの自分を超えることに重きを置いている感じがします。
「今の私はこんなもんだ」
「今日はまずまずのゴルフだ」
言い訳など言わず、声を荒げず、物静かに淡々と。
いつかあの人も、ラウンド中に遠い昔の自分を思い返して語るのはやめて、その時の自分を褒めながら楽しくゴルフをやれる日が戻って来るといいなあ、と祈っています。
僕たち世代のゴルファーにもそう遠くない将来、「あの頃はもっと飛んだ」って考える時期がやってきます。その時になって、
「あの頃は飛距離はあったけど、パターとアプローチは今の方が断然上手いなあ」
とかって、過去の自分にすがらなくても良い自分でありたいですね。
僕も遠くに大きく飛ばすことばかり考えていないで、昨日の自分よりちょっとだけ成長できるようにと切り替えてみようかな。
頑張ろうっと。