OKパットにまつわる、地獄の想い出

以前、取引先のゴルフコンペで凄くキビシイ現場に遭遇したことがあります。

僕の組は、僕と取引先の女社長放送局の部長大手広告代理店の支店長との4人パーティ。女社長はもう結構な年齢だったので、息子に近い歳の僕のことをとても可愛がってくれていて、気心知れた間柄でした。

結構な人数のゴルフコンペだったので、
プレーイング4あり6インチプレースありワングリップのOKパットありのゆるゆるルール。僕はこの日、自分ルールで6インチだけは使わないことにして、あとはコンペのルールに従う方針です。迷惑かけないようにね。

プレーイング4・・・OBを打ってしまった場合、前方の特設ティーから第4打目として打つことができる、ゴルフ場が決めたローカルルール。公式ルールではそんなものない。

6インチプレース・・ショットしたボールの落ちた場所が打ちにくかったりした場合、6インチ以内であれば好きな場所に動かして良い、というその場限りのルール。公式ルールではそんなものない。

OKパット・・・パッティングして、外しようがないほどカップに近づいた時に、競技の進行が遅れるのを防ぐために最後の一打を省略すること。公式ルールではそんなものない。


1番ホール、それぞれがまあまあ刻みながらもなんとかグリーンまでやって来ました。
カップまで一番遠い女社長からのファーストパット、僕は残り2メートルで4番手です。
社長の本日初パット、下りのラインを打ったボールは少し慎重過ぎたのか、結構なショートをして1メートル程を残しました。そこからまだまだ
下りが続く、難しいラインです。

「オッケーぇぇぇぇぇ!!!!」
放送局の営業部長が叫びました。
えぇっ!!?…これって見え見え過ぎで一番恥ずかしいやつじゃん…)
唖然としている僕の後ろから、広告代理店
「はい、オーケー!ナイスパットでした!」と続きます。マジかよ…俺ならバカにするなって怒っちゃうよ…

「いや、さすがにコレは難しいですから社長、もう1回やっときますか?」
僕が聞こうとした矢先、
「はーい、ありがとうございます」女社長はそのボールを当たり前かのように拾い上げたのでした。

あなたが最初にOKを出したその距離が、その日1日の基準となります。

こうなるともうグチャグチャ。その1メートルがOKの基準ですから、放送局のパットも80センチ残しでOK、さすがにマズさを感じたらしい広告代理店のパットも大きくオーバーするも、返しを打たずにOK。そんな中で僕の順番です。
僕の距離は2メートル。ここは僕だけでも入れる!
最低でも本物のOKの位置につけなくては、と力んだパットは、ダフって50センチもショートしました。

「オーケー!!!」流れ的にも、当然全員が口を揃えたOKコールでしたが、自分としてこれは許せず、「僕はコレ、外しちゃう可能性あるんでもう一回打ちます。」と、もう一度打ちました。
下りラインの微妙なパットはそれでも入り切らず、さらに1回打って結局3パットで上がりです。
「さすがキミはアスリートだから入れるまでやるんだねえ」放送局のクソみたいなフォロー引きつった笑顔で応えながら、(こんなのゴルフじゃない!)と、この組にマッチングした幹事を呪いました。

次のホールからは
ワンパットさえすれば、あとはどんな距離が残ろうとOKが出るようになり、アスリートのキミだけはOKなしの完全ホールアウトでお気の済むまでどうぞ、という地獄のような1日になりました。
こんな気持ちでちゃんとしたゴルフはできない(泣

表彰式で
広告代理店が優勝の賞品を得意気に受け取っているのを見ていた僕は、きっと誰よりも死んだ目をしていたことでしょう。

どんなに短い距離だろうと、パター打ちたい人はいます

そんなことがあってから、僕は人にパットのOKを出すのが苦手
入れごろ外しごろの微妙な距離が残った場合、OKを出すべきか出さざるべきか悩んでしまうのです。
それ以前に、ご本人が打ちたいのか打ちたくないのかも気になります。
だからOKを出されるのも好きではありません。難しいラインなら尚更、入ろうが入るまいが打っておきたいから。
マッチプレーでOKパットを出されるなら、喜んでいただきますけどね。

マッチプレー・・・1対1の直接対決で戦う。トータルスコアではなく、1ホールごとの勝敗の積み重ねで勝負をつける競技方法。相手が最後のパットを入れようが入れまいがそのホールの勝敗が決していると思える場合、OKを与えることができる。競技ゴルファー全員が憧れる夢のプレー形式

僕はパットがOKかどうかは、競技ゴルフでなければそれぞれが自分で決めて欲しいと思っています。自分が間違いなく入る自信があるなら、打たずに拾い上げたら良いのです。
ゴルフの精神ってそういうもんでしょ?

誰かがOKを言ってくれるまでなかなか打とうとしない「OK待ち」なんて言葉も聞きますけど、難しいラインを入れてこその達成感がたまんないのになあ。

競技でもない、大きな金額でニギリ(賭けゴルフ)なんてやってるならともかく、誰にも迷惑かけないんだったら、カップに入れる最後までやり切りましょうよ。

その姿勢がカッコいいと、僕は思っています。