どこのゴルフ場にでもいる、名物キャディーの話です
「ナイスッ!!」
コースのどこにいようと、その存在を知らしめる元気な声。
僕がメンバーになっているゴルフ場の名物キャディーさんです。
まるでコースに住んでいるかのように、ティーグラウンドからハザードまでの風を見込んだ正確な距離や、落下地点の傾斜やライの状態を知り尽くし、
「ここから◯ヤード以上打ってしまうとあの木の葉っぱが邪魔になるから打つのは◯ヤードまでにしといて!」
「ここのマウンドを越えるまでは打たないとカップまで絶対に届かないからね!」
などと、コースを知らない人にとっては本当にありがたいアドバイスをくれる、まさに名物と呼ばれるに相応しい彼女。ゴルフ場の歴史や裏話、世間話にも対応できる素晴らしい人です。
良いショット、良いパット、良いスコアをプレーヤーと共に喜んでくれて、どうにかして人の役に立ちたいと考えてくれている、【The 理想的なキャディー】かのように見えるのですが・・・
実はこのキャディーさん、ウンザリするほど世話焼きが過ぎるのです。
そりゃ言われた通りに打てるならいいんだけど
「え?!ドライバー持ってるの?ダメダメ!こんなとこドライバー使ったら突き抜けちゃう!!」
「無理しないであそこに刻めばいいからこのクラブ持って行って!」
「カップ2個分外して半分の距離だけ打って」
とにかく自分の力でプレーヤーのスコアをどうにかしてあげたいという想いが強すぎるのでしょう。
聞いてもいないこと、口を挟まないで欲しいことまでどんどん言ってくれます。いや、ガンガン言ってきます。
その気持ちはとても嬉しいのですが、教えられた場所へ言われた通りに打てるんだったら、僕は今すぐ仕事を辞めてプロゴルファーを目指すんですよ。
キャ 「あっちは広いように見えるけど傾斜で流れるから絶対にあっちへ向かって打っちゃダメ!」
僕 「あっ!!」
キャ 「・・・・。」
僕だってもちろん、そこへ打とうとして打っているんじゃないんです。嫌がらせしてるんじゃないんです。
それでも絶対に行きたくない方向へなぜか行ってしまうのがゴルフの難しいところ。
「あっちはダメ」より、打っても良い方向へ「あっちの方がいい」って言い方をしてくれたらまだマシなのかもしれないけど。
それでも、グリーンに着くまではまだ良いんです。パター以外は彼女の言った反対方向に飛んでいっても、ミスしちゃいました〜で済みますからね。
教えてください 「彼女を傷つけずに黙っといてもらう方法」
一番厄介なのは、グリーン上で聞いてもないのにパットのラインを指示ってくることなんです。
「スライス。微妙に上ってるからしっかり打ち切って!」
「あの色が濃いところからフック入るからカップ2個は外していいからね!」
「下り真っ直ぐ!半分までしか打っちゃダメよ!」
このゴルフ場のグリーンは、わかりやすい急勾配は少なく、微妙な傾斜がプレーヤーを惑わせています。名物キャディーさん、コースに住んでいると言われているだけに各ホール、ピンの位置によってボールの曲がり方を記憶しているのでしょう。グリーンのどの場所から見ていても自信たっぷりに言い切ってきます。ただ・・・これが3回に1回くらいの割合で間違っているんですねぇ。
僕はパットのラインは、迷った時以外はキャディーに聞かないようにしています。
これは当然、ただただ僕の技量が足りないせいですが、聞いてもないのに自分が感じたラインとは真逆だという情報が頭に入ってきてしまうと、どうしてもパットに迷いが生じて、距離感まで合わなくなってしまうのです。
だから、今日のここのグリーンもフックかスライスか、自分の力でしっかり感じられた時には誰にも聞かずに・・・(よしスライスでいこう!)「ねえ、ここフックだからね。」 あぁあぁあああぁああぁあ・・・また出た・・・
確実に自分が正しいと信じてその通りに打ち、信じた通りの結果なのに自信を持っては打ち切れず、案の定、届く気配すら見せずに外れたパット・・・もちろん自分の技術のせいですけど。
当然、3回のうち2回は正しいラインを言ってくれるので、アドバイス通りに打つことの方が多いです。ただ・・・それも言われた通りに打てたら良いのだけれど、思うようにはなかなか出来ないのがゴルフ。
2メートル3メートルがポンポン入ったら、とっくに仕事辞めてるんだってんだよ、俺ぁ。
問題なのは、外れた後のその場の重たい雰囲気です。
彼女も誇り高きキャディーですから、自分で間違えたとは言いません。もちろん僕も「逆でしたね」なんて言えるわけもなく・・・。キャディーが誰であろうと、そんなことは言いませんけどね。
とにかく、それまで元気ハツラツだった彼女が、しばらくシュンとしてしまう嫌な空気に。
(ああ、この人は私を信じて打たなかった・・・確かに私のアドバイスの逆に曲がったけれども、私を信じて打たなかった・・・って、、、、思っているんだろうなぁ)
このモヤっとした心境は、次のホールのティーショットまで引っ張ることになります。
さらにこれが、彼女が言った通りのラインだった場合はなおさら厄介。
(あ〜あ、スライスだって言ったのに、私の言うこと聞かなかったから・・・って、、、、思われてるんだろうなぁ)
この場合は、次に彼女が言った通りに打って見事カップインするまで引っ張るのです。
これは僕にとっては完全に度が過ぎたお節介。お役に立ちたい気持ちが空回りしてしまっています。なんとかして早いとこ彼女の暴走を止めなければ、彼女に対して苦手意識ができてしまう・・・。
これが今の僕の大きな課題です。
「自分で考えたいからラインは教えてくれなくていいですよ。」今更こんなこと言ったら、彼女を傷つけてしまう気がするんだよなぁ・・・なんとか彼女を傷つけずに、みんなが良い気分でいられながらにして、パットのラインだけでも黙っといてもらう良い方法、どなたか教えてください。
みんなに好かれるようにするというのは、なかなかな気苦労もあるんですよねぇ・・・。