期末テストのたびに「勉強やってきた?」って。そりゃ当然やってきてましたよ。
中学生の頃、期末テストの前になると必ず聞かれた「テスト勉強やってきた?」というやつ。
勉強をガリガリやっているだなんて思われるのは格好悪いと感じていたのもあって、決まって「全然やっていないよ」って答えていました。
あの世代特有の「やる気ないアピール」です。
実際に「勉強をやった」と言えるほどまで勉強したわけでもないのですが、本音を言えば(勉強をやってもいないのにこんなに出来る)って、カッコつけたい気持ちが強かったんですね。
結果、戻ってきたテストの成績が良くても「おまえ、全然勉強してないって言ってたのに凄いね」なんて崇められることはなく、今思い返せば勉強をやっていなかったことを証明するアリバイ作りのために、テスト前日でも遊んで帰ったり、深夜までラジオを聴いていたのがバカみたいだったなぁ、と。
若気の至りってやつですね。みんな経験あるでしょう。
オッサンになっても未だにその感覚が抜けないのか、ゴルフでも自分が
「どれほど練習をしていないのか」
「どれほどやる気がないのか」
をアピールして、それが格好いいことだと勘違いしている人がいます。
やる気ないのに良いスコアが出せちゃうのって、やる気バリバリで良いスコアを出すのと比べてそんなにカッコいいことですかね?
先日、所属クラブでこの季節恒例の大きな競技会がありました。
予選ラウンドと決勝ラウンドが2週にわたって行われるスクラッチ競技、第1週目の予選ラウンドは豪雨の中。
同組になった一人が朝からテンション激低です。
「正直言ってこんな大会どうでも良いんだけどヒマだから来ました」
「練習なんてここ何ヶ月も行ってないです」
「いつも一緒にラウンドしてる〇〇や△△がスーパー上手くて、僕だけが適当なんですよ」
僕含め、はじめましての3人に挨拶代わりの「やる気ないアピール」。それに加えて、わざわざクラブチャンピオンたちの名前を挙げての「自分の仲間は超上手いマウント」です。
おまえ思春期かよ。
ちなみに僕らの競技はハンディキャップ2桁台同士で競う、言わば2軍の大会。これで優勝すれば、やっとシングルプレーヤーへの道が見えてきます。
(こっちは予選通過しようと必死で真剣なんだけどな・・・なんだかすごくバカにされてる気がするなぁ)スタートからあまり良い気分ではありません。
そいつはラウンド中にも
「こんな雨の中、全然やる気が出ない」
「早く上がって帰りたい」
「お腹が空いてやってられない」
そんなことを言いながらも、雨の中でも時折素晴らしいショットを見せて、大崩れしないようにスコアをまとめています。もちろん豪雨に加えて台風みたいな風ですから、チョロもザックリもあるんですけど。
(わざわざそんなこと言わずにいたら、なかなか格好良いゴルフなんだけどなぁ・・・)いやぁ、惜しいね。
ところで雨と風で完全に自分を見失いゴルフがおかしくなった僕は、次週の決勝ラウンドへの進出がどんどん危うくなってきました。
18ホールが終わってみると、結局全員が全員、暴風雨の影響もあって散々なスコア。
中でも僕は特にひどかったので、これは予選通過だなんてとんでもないな、と完全に諦めモードでお風呂から上がってみると、雨風に心折れた出場辞退者が多かったらしく、意外にも僕もそいつも予選を通過していました。
ただ、その大会の順位が決まるのは予選ラウンドと決勝ラウンドの合計スコア。二人ともトップ通過とは10打以上も差がついていて、優勝の見込みはほとんどありません。
翌週の決勝ラウンド、予選通過者の中でも下位グループの僕らは、下位同士でまたそいつとの同組。
またアイツと一緒か・・・せめて気分良くラウンドしたいなぁ・・・
前の週からの悪い予感は的中しました。
「僕、予選通過したことを2日前まで知らなかったんですよ。たまたま他の用事でクラブに電話したら『予選通過してますよ』って。だから今日は仕方なく来ました。」
なんか腹立つ・・・まぁ、確かにお互い「決勝に参加することに意義がある」的なスコアだったので「仕方なく」の気持ちはわからないでもないんですけど・・・。知らなかったはずがない。そんなわけがない。
「それでも、今日良いスコアでラウンドしたらハンディが減りますもんね、頑張りましょう!」僕が言うと、
「ハンディ減っちゃったら困るんですよ。いつも握ってる(賭けてる)〇〇や△△に勝てなくなっちゃうから。」
コイツ・・・やっぱり苦手だ・・・。
そんな思いとは裏腹に、その日の彼は息を呑んでしまうほどの素晴らしいゴルフ。
ドライバーもアイアンも、雨の中で見せた片鱗が答えのナイスショットの連発です。
「僕、雨じゃなければ上手いんですよ。」口も滑らかに自画自賛。
ハーフを終えた時点で、彼のスコアはなんと30台でした。
10打以上もあったトップとの差は、あと5打・・・これ、まさかあるんじゃないか?
「あんな大差から逆転優勝なんて出来るわけないし、本当にしちゃったら困るんだけどなー」
ここまで来てもオマエはまだやる気のなさをアピールするのかと思いましたが、それでもゴルフの内容はどこまでも崩れることなく、まさかの逆転優勝が現実味を帯びてきていました。追われてるトップは相当焦っているだろうなぁ・・・。
後半のホールを一つずつ終えていくにつれ、彼の様子が変わってきました。
ホールアウトするたびに後ろの組でラウンドしているトップとの差をチェックして、あと3打でいける、あと2打だ・・・と、何がなんでも勝ちたい感を露わにしています。
それでも口から出てくるのは、「なんだかやっとやる気が出てきそう」だとか「お腹が減ったからスコアなんてどうでもいい、とにかく早く上がりたい」と、格好つけているつもりなのか、それとも勝てなかった時の予防線のつもりなのか・・・そこに重ねて、突然誰もが閉口してしまうようなエゲツない下ネタを挟んできたりキャディに気持ち悪い絡み方をしながら、結局最後まで適当な感じで18ホールを終えました。きっとそれが彼のリラックス法だったんですね。
確かに、必死感を出さずにクールに取り組む姿は格好良いと思います。
熱さを見せずに淡々とラウンドして、素晴らしいスコアで上がってくるのには憧れます。
ただ、いい歳になっても中学生のような「やる気ないアピール」は色々を通り越して格好悪くて気持ち悪くって。そして何より、頑張っている人に対して失礼です。
べつに性格が悪そうなわけでもない、態度も悪いわけではないはずなのに、僕を含めて同伴していた他の三人、いつの間にか誰一人として彼を応援する気持ちがなくなっていました。
本当に嫌なら辞めて帰ればいいのに。何度も口から出そうになったくらい。
彼はカッコつけ方を完全に間違えていました。
もちろん本当に体調が悪かったり、気候が合わなかったりで、やる気が出ない日なのにラウンドしなくてはいけない時はあるでしょう。それでもどうせやるのなら、そんなことわざわざ口に出さずに黙ってやるべきです。他の人にとってはやる気満々のラウンド。楽しみにしていた一日なのだから。
そして実際には、やる気がないわけなかったはず。勝つことに必死だったはず。
ひたむきに頑張っているのは凄く格好良いじゃありませんか。それを嘲笑うかのような発言は、たとえ本心でなくとも御法度です。
剥き出しの勝ちたい感情や、頑張っているところを見て、それを格好悪いと感じるのは自分が努力をしていないから。そんな人の真似が格好良いわけないでしょ。
いい大人が、クソガキのようなカッコつけ方はやめましょう。
せっかくの素晴らしいゴルフだったのに、とても勿体無い人だったなぁ。
「いくつになっても少年のまま」と「いくつになっても思春期のまま」を履き違えないように
結局、そいつとトップ通過との戦いはプレーオフまで縺れ込み、スタート時にあった10打差以上をひっくり返してそいつが歴史的優勝を果たしました。
逆転された方はなんと可哀想なことか。何年先までも語られることでしょう。2軍戦なのに。
応援する気にも、讃える気持ちにもなれなかったので、表彰式は見ずに立ち去り、彼がどんな挨拶をしたのかはわかりません。
きっと「優勝する気なんて全然なかったですが」なんて言っちゃって、反感買ってしまってるんだろうなぁ・・・
あの頃、テスト勉強を「全然やっていない」と答えたのにはもう一つ理由があります。
「今回はめちゃくちゃ頑張った」って宣言したのに、ライバルより結果が悪かったら恥ずかしいと思っていたからです。
大人になった今になってわかります。
頑張ったことは誇れることです。
正々堂々と勝つことに必死になることはとてもカッコいいことです。
いくつになっても少年のままなのは可愛い時もあるかもですが、いくつになっても思春期のままは、なかなか愛されにくいですよ。